「ゾンビに噛まれた人間はゾンビとなる」
「生者の肉を食らう」
「生前の記憶により行動する」
「脳を破壊するまでは行動をやめない」
といったいまでも続くゾンビ映画のテンプレートを作った神監督である。
ホラー映画の監督の中でも特に好きな監督である。
本記事を読むことで、ジョージ・A・ロメロの略歴と作品をかんたんに知ることが出来る。
ジョージ・A・ロメロ
父親はスペイン生まれでキューバ育ち、母親はリトアニア人だった。
ペンシルバニア州ピッツバーグで活動を始めるまで、ニューヨークで育つ。
卒業後、短編映画やCMを撮影を始める。
友人たちと資金を出し合って(それだけでは足りず後から出資者を募った)製作した『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』がミッドナイトシアターで大ヒット
その後、イタリアのダリオ・アルジェント、特殊メイクのトム・サヴィーニと組んだ『ゾンビ』が大ヒット。
『ゾンビ』に続き、『死霊のえじき』、『ランド・オブ・ザ・デッド』、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』、『サバイバル・オブ・ザ・デッド』といったゾンビ映画を製作する。それぞれの作品がその時代の風刺を込めた内容となっている。
また、CM出身だからなのか、編集のカット割りが細かくダイナミックな絵づくりに引き込まれる。
作家のスティーブン・キングは脚本を書いてもらったり自作に出演させたりと交流が深かったようだ。
ロメロ監督の劇場版『スタンド』『ペット・セメタリー』も見たかった。
影響を受けた監督はオーソン・ウェルズ、ハワード・ホークス、アルフレッド・ヒッチコックなどである。
2番目の妻が『マーティン』や『ゾンビ』で共演している女優のクリスティン・フォレストだった。
2009年カナダに移住。2017年7月16日、カナダのトロントで77歳で亡くなった。
主な監督作
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968)
父の墓参りに来ていたバーバラと兄のジョニーは奇怪な足をひきずる男に襲われる。
兄は死に、一軒家に逃げ込んだバーバラは、他に避難したひとたちと遭遇する。
やがて、一軒家は生ける死者の集団に囲まれる・・
友人たちと手持ちの資金を出し合い製作したモノクロのゾンビ映画。現在の人を
脚本はジョン・A・ルッソが手掛けている。
本作を知ったきっかけはテレビで『ゾンビ』の放送を見てから、しばらくして、なんの雑誌の付録か忘れたが海外輸入レーザー・ディスクの薄いカタログを見つけた。
そこで、『ゾンビ』の監督の初期のゾンビ映画で『生ける屍の夜』と紹介されていて、とても見たかった。
実際に見たのはしばらく後年で、日本でビデオ販売されてからである。
There’s Always Vanilla(1971)
軍を除隊して、地元のピッツバーグに戻った青年が、CMのモデルと出会い同棲を始める。
悪魔の儀式(1972)
日常にストレスを感じていた主婦が、悪魔の儀式にはまり傾倒していく。やがて幻覚を見始める・・
ザ・クレイジーズ 細菌兵器の恐怖(1973)
最近に襲われ軍に封鎖された街。細菌と軍にはさまれ、そこから逃げようとする人たちを描く。
新型コロナが流行しているいま、より恐怖感を感じる映画
我らの妖精リン・ローリーが出演している。
いまはなくなってしまった、カルト映画の聖地、”渋谷シアターN”で劇場公開されたこともある。
マーティン/呪われた吸血少年(1977)
後述するが『ナイトライダース』と並んでロメロ本人が気に入っている、直接血を吸わない異色の吸血鬼作品。
ゾンビ(1978)
深夜のモンローヴィル・モールで撮影されたゾンビ映画の傑作。
中学生の頃、当時ビデオデッキを早々と導入した同級生のM君家に数人で押しかけてTVの再放送の録画(河野基比古の解説版)でみた作品。
ゾンビについてはいくら紙面があっても足りないので別途書く予定。
ナイトライダーズ(1981)
馬の代わりにバイクにまたがり、中世の甲冑を着こんで戦いを繰り広げる旅芸人の一座の物語。
後述するがロメロ本人が気に入っている作品。
エド・ハリス主演。
トム・サヴィーニ、クリスティン・フォレスト、スコット・H・ライニガー(『ゾンビ』のロジャー役)など、ロメロ作品の登場人物が総動員されている。
クリープショー(1982)
スティーブン・キングが脚本を書いた全5話のオムニバスホラー。
スティーブン・キングも2話目に出演する。
ゾンビのゲイラン・ロスが2019年に来日したときもらった『クリープ・ショー』の1シーンのスチールとサイン。
書いてくれたメッセージは『クリープ・ショー』のセリフの一部と言っていたような気がする。
死霊のえじき(1985)
『ゾンビ』でのヒューマンドラマとショッピングモールという舞台があまりに素晴らしく良すぎたため、当時、劇場で見に行った際は、期待が高かった分、地下の話が多くて物足りなかった。
ただし、グレードアップしたトム・サヴィーニの特殊メイクは凄いと思った。
モンキー・シャイン(1988)
交通事故が首から下が麻痺してしまった青年。
友人の生物学者から、介護用に知能を特別に強化された猿を渡される。
主人の心を察知する頭のいい猿は青年の敵意を感じた相手をつぎつぎと殺すようになる・・・
マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴(1990)
2人のホラー映画の巨匠がエドガー・アラン・ポーの原作を映画化。ロメロが1話目『ヴァルドマー事件の真相』、ダリオ・アルジェントが2話目『黒猫』を監督した。
ダーク・ハーフ(1993)
売れない文学作家と売れっ子のバイオレンス作家。
実は同一の作家の心は次第に分裂していく・・
色々な賞を取ったスティーブン・キングの同名小説の映画化。
URAMI〜怨み〜(2000)
雑誌の編集者でまじめな性格のヘンリーはことごとく、ひどい目に遭う。
誰からも認められないと思ったヘンリーは白いマスクを着けアイデンティティのない男に変貌する・・
ランド・オブ・ザ・デッド(2005)
『死霊のえじき』以来、ゾンビ映画を撮っていなかったロメロの久々のゾンビ作品。
富裕層と貧民層で全然違う生活を描いた社会派作品。
ダイアリー・オブ・ザ・デッド(2007)
自主映画を撮影していた大学生達がラジオで世界中でゾンビが蔓延していることを知っる。撮影メンバの監督のジェイソンはいま起こっていることをカメラにおさめることを決意する・・
以下は見たときの過去ブログより。
携帯電話のカメラやインターネット、Youtubeなどにより誰もが現地レポーターになりうる状況を描いた手持ちカメラによる主観撮影による映画。
仲間が襲われているのに撮影どころではないだろうというつっこみは置いておいて、なかなか楽しめた。スティーブン・キング、ギレルモ・デル・トロ、ウェス・クレイブン、クェンティン・タランティーノ、エドガー・ライトなどが本編で流れるラジオ放送の声でカメオ出演している。
サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009)
生きる死者達が蔓延した世界で元州兵のサージ達一行は、新天地を求めてある島に向かう。しかし、その島はゾンビ達を狩る老人オフリンの一族と、ゾンビ保護派のマルドゥーンの一族が対立する島であった・・・
2010年6月13日にホラー映画好きの仲間2人と池袋で鑑賞した記憶。以下は鑑賞当時のブログからの引用。
西部劇でよく描かれてきた2つの一家の対立とそこに関わる元州兵とゾンビいった4つの勢力がからんだ西部劇ミーツゾンビといった内容のゾンビ映画。
前作「ダイアリー~」と比較してアクション要素が高くなっており、一部強引な展開もあったが、そこそこ楽しめる映画であった。
今回もゾンビの葬り方や行動パターンに色々な趣向が凝らされている。
以下は「リピーター・オブ・ザ・デッド」という名義で半券を集めて、ロメロのサイン入りポスターまたは、非売品プレスをもらおう(5名)という企画のチラシ。いままでネットで聞いたことがないが、もらった人はいるのか聞いてみたい。
半券5枚というのがハードルが高い。でも、仲間内で集めればいけるかも?
TVシリーズ
フロム・ザ・ダークサイド(1983~1988):製作総指揮、脚本を担当。
他にもVol.5や「ネオ・フロム・ザ・ダークサイド」などもあったと思うがすぐにはみつからず。
映画以外のお仕事
バンド”MIFITS”のプロモーションビデオ
など
参考書籍
洋泉社の「ジョージ・A・ロメロ/偉大なるゾンビ映画の創造者」
ゾンビ映画に詳しい3人他が全作品について網羅的に解説してある。
最後に
ロメロ監督の出演者が一番その人となりを良く知っているはずなので『ゾンビ』の出演者のロメロ監督についてのインタビューを掲載する。
2019/11/30ゾンフェスイベントでのインタビューの自ブログ記事より抜粋。
ゲイラン・ロス(『ゾンビ』のフラン役)のロメロ監督についてのインタビュー内容
演技などについて質問してもどうなんでしょう?あなたはどう思いますか?と逆に聞いてくる監督だった。穏やかでとても優しい方で言葉をあまり話す監督ではなかった。
一般的な映画だと撮影が終わるとみんな疲れて終わるものだけどゾンビでは役者、キャストはみんな楽しんでいた。
監督が言葉少ないからかも知れないですが、逆にみなの方から監督にオファーする雰囲気だった。ジョージはキャメロットという理想郷を思い描いていた。
彼が一番理想に近い形に作られた映画が「ナイトライダーズ」でお気に入りの作品だった。彼とはずっと長い間友人関係をつづけてきた。
彼がずっと思っていたのは社会への貢献と民主主義だった。もう1つジョージ監督が大好きだった映画は「マーティン」だった。
監督がとても吸血鬼の気持ちに寄せていて感情を入れていた。
ワーキングクラスを吸血鬼にすることによって社会的な公平性について疑問を投げかけていた。
ケン・フォーリー(『ゾンビ』のピーター役)のロメロ監督についてのインタビュー内容
ジョージの台本を読むと彼がどんな人物か分かる。
撮影現場で一人になってじっと考えるタイプだった。
彼はユーモアにあふれている人。
みな問題に囚われても彼は囚われない人だった。人によっては違う関係性をきずいていた。
ナイトのプロデューサーの人とかは違う関係性だったと思う。何をしたいのか指示をくれた。
いつも「角を曲がれ」という感じの指示で、こうすればいいのか?という質問を毎回ジョージにしていた。
他のキャストも必ずジョージとは自分のキャラクターについて聞いたり、グループで話す時間はいつもあった。
キャスト、内容全て完璧だった。たまに物事はうまくいくことがあるよね。
最後に一言
単なるホラー表現ではなく社会風刺を入れ込んだ、作品が多くの人に共感をよび人気のある監督なったと思う。。
これからも凡百のゾンビ映画が作られていくだろうが、ロメロのスピリットが引き継がれたメッセージ性のあるものを期待したい。
誕生日に間に合わせたかったので、ざっくりと書いた。
ロメロ監督および個々の作品については語りつくせないので、後日、本記事に加筆するか、また別記事として書いきたい。宣材も取り急ぎ探して見つかったものだけなので、見つかり次第追加していく。
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