今回は「キャリー」「殺しのドレス」「スカーフェイス」「アンタッチャブル」「ミッション:インポッシブル」などカメラワークに凝ったサスペンスを得意とする映画監督ブライアン・デ・パルマについて紹介する。
本記事を読むことでブライアン・デ・パルマのかんたんなプロフィールと作品についてざっくりと知ることが出来る。
ブライアン・デ・パルマ
1940年9月11日にアメリカのニュージャージー州で生まれる。
父親は外科医。
学生時代は物理を専攻する。「市民ケーン(1941)」といったクラシック映画を見て映画に魅了された。
また、アルフレッド・ヒッチコックやアンディ・ウォーホルの作品に魅了されていた。
「悪魔のシスター(1972)」や「愛のメモリー(1976)」などの低予算の映画を撮影し、スティーブン・キング原作の念動力を持つ少女を描いた「キャリー(1976)」が大ヒットする。
また、「スカーフェイス(1983)」、「アンタッチャブル(1987)」、「ミッション:インポッシブル(1996)」などのヒット作を作り上げる。
彼は独特のカメラワークを駆使し、特に有名なのはスプリットスクリーンという画面を分割し、同じ時間で各所の出来事を観客に見せるという手法を使っている。
主な監督作品
悪魔のシスター(1972)
ファントム・オブ・パラダイス(1974)
愛のメモリー(1976)
キャリー(1976)
フューリー(1978)
悪夢のファミリー(1978)
殺しのドレス(1980)
ミッドナイトクロス(1981)
スカーフェイス(1983)
ボディ・ダブル(1984)
アンタッチャブル(1987)
カジュアリティーズ(1989)
虚栄のかがり火(1990)
レイジング・ケイン(1992)
カリートの道(1993)
ミッション:インポッシブル(1996)
スネーク・アイズ(1998)
ミッション・トゥ・マーズ(2000)
ファム・ファタール(2002)
ブラック・ダリア(2006)
リダクテッド 真実の価値(2007)
パッション(2012)
ドミノ 復讐の咆哮(2019)
など
作品の詳細
汝のウサギを知れ(1972)
最近、ザ・シネマで放送された視聴がレアだったコメディ。既にスプリット・スクリーンの技法が使われている。
デ・パルマが憧れのオーソン・ウェルズが出演している。
悪魔のシスター(1972)
記者グレースが向かいのマンションで目撃した殺人だが、警察の捜査が入るも事件が起きた証拠が一切残っていなかった。
彼女は探偵と協力し、このマンションに住むモデルのダニエルが関係していると考える。
切り離されたシャム双生児を題材にした、サスペンススリラー。
ダニエル役に「スーパーマン」のロイス・レイン役のマーゴット・キダー、グレース役でジェニファー・ソルトが出演している。
音楽はヒッチコックの「めまい」などで有名なバーナード・ハーマン
「シスターズ(2006)」としてリメイクされている。
ファントム・オブ・パラダイス(1974)
天才的な作曲の才能を持つウィンスローが、デス・レコード社主催の「パラダイス劇場」のオーディションで楽曲を売り込もうとする。また、ウィンスローはそのオーディションに歌手として受ける新人のフェニックスに恋する。
しかし、デス・レコード社の社長スワンはウィンスローの曲もフェニックスも全て奪ってしまう。
復讐にとりつかれたウィンスローは・・・
デ・パルマ版「オペラ座の怪人」ともいうべき作品。
ヒロインのフェニックス役は「サスペリア」のジェシカ・ハーパー
↓いまではたぶん珍しいファントム・オブ・パラダイスのパンフレット(右側)
↓サントラCD
愛のメモリー(1976)
富豪のマイケルは結婚10年目の祝いの際に、妻と娘を誘拐される。しかし、誘拐犯の車が転落し、妻子は亡くなってしまう。
やがて、16年後、マイケルは妻とそっくりな女性と出会うことになるが・・・
ヒロインはわたしの好きな女優ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド
音楽はバーナード・ハーマン
キャリー(1976)
スティーブン・キング原作。気弱でいじめられっこの少女キャリーの念動力がプロムのある事件で爆発する。
こちらもスプリットスクリーンが印象的。
アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞
キャリー役はシシー・スペイセク。キャリーを抑圧する母親の役は「ハスラー」のパイパー・ローリーが演じる。ともに本作でアカデミー賞にノミネートされている。
ウィリアム・カット、ジョン・トラボルタ、デ・パルマ映画の常連ナンシー・アレンも出演している。
音楽はピノ・ドナッジオ
クロエ・グレース・モレッツ主演でリメイク版「キャリー(2013)」が作られている。
フューリー(1978)
アメリカ政府の諜報員ピーターは息子ロビンを誘拐されてしまう。同僚のチルドレスがロビンの念動力に目をつけ、彼を洗脳してしまうのだった・・・
ピーターはロビンと同じく超能力を持つ少女ジリアンの協力を得て、ロビンの居場所を探し出す。
ピーター役はカーク・ダグラス、チルドレス役はジョン・カサベテスといった名優たちが出演している。
ジリアン役はスピルバーグの元妻のエイミー・アーヴィングが演じる。
音楽はジョン・ウィリアムズ
デビッド・クローネンバーグ監督の超能力者どおしの対決する「スキャナーズ(1981)」とイメージがかぶる。
殺しのドレス(1980)
情事のあとエレベーターの中でめった刺しにされるケイト。たまたま事件を目撃した娼婦のリズは、ケイトの息子と協力して、捜査を始める・・
リズ役はナンシー・アレン、精神分析医の役をマイケル・ケインが演じる。
家族で見ると気まずいケイト(アンジー・ディキンソン)のエロスシーンがのっけからあるが、スリラー映画としてはなかなか楽しめる作品。
ミッドナイトクロス(1981)
音響効果マンのジャックは低予算映画の音響を録音する最中に、自動車事故を目撃する。
しかし、その事故は巨大な陰謀の一幕であった。やがて、その陰謀はジャックにも迫ってくる・・
デ・パルマの作品の中では一番の佳作だと思う作品。
鑑賞後のやるせなさが半端ない。
主演はジョン・トラボルタ、ヒロインはナンシー・アレン
音楽はピノ・ドナッジオ
スカーフェイス(1983)
キューバからアメリカに来たトニー・モンタナの成り上がりと破滅への物語
欲望のままのトニーの行動が、ことごとく『これをやっちゃいかん』で破滅の方向に向かっていくのが、ハラハラして堪らない。
クライマックスのヤクを決めながら、襲撃グループにグレネードランチャーで反撃するところが凄まじい!
襲撃したときに仲間とともに拉致されたときのチェンソーのシーンが「悪魔のいけにえ」並みに怖い。
主演のトニー・モンタナ役がアル・パチーノ。
エルヴィラ役のミッシェル・ファイファーもいい。
アンタッチャブル(1987)
禁酒法施行中の1930年代のアメリカのシカゴの街。アル・カポネ率いるギャング団が密輸と密造のビジネスで街を牛耳っていた。
アル・カポネは表向きは合法的なビジネスをしており、なかなか尻尾を出さなかった。
そこで、エリオット・ネスをリーダーとするアメリカ合衆国財務省の特別捜査チームが結成される。
エリオット・ネス役をケビン・コスナー、彼の相談役をショーン・コネリーが演じている。
本作でショーン・コネリーは第60回のアカデミー助演男優賞や第45回のゴールデングローブ助演男優賞を受賞している。
音楽はエンニオ・モリコーネ
カジュアリティーズ(1989)
ベトナム帰還兵のエリクソンがベトナム出兵時の悪夢出来事(襲撃した村の少女のレイプ殺害事件)を思い出す。
エリクソン役はマイケル・J・フォックス
ショーン・ペン、ジョン・レグイザモなどが出演
虚栄のかがり火(1990)
ウォール街でトレーダーをしていたマッコイだが、不倫相手のマリアが運転していた車で黒人を轢いてしまう。・・・
トム・ハンクス、ブルース・ウィルス、メラニー・グリフィス、モーガン・フリーマン、キム・キャトラル、キルスティン・ダンストなど錚々たるメンバーが出演しているが映画は大コケした。
「汝のうさぎを知れ」で訣別して以来、ワーナーで撮った作品
レイジング・ケイン(1992)
心理学者のカーター・ニックス博士は、自分の息子をモデルに児童心理学の研究をおこなっていたが、それでは飽き足らずに、他人の子を誘拐しての実験をするようになる。
そこに双子との弟のケインが現れ、二人で共謀して実験を続ける・・・
カーター博士とケイン役はジョン・リスゴー
音楽はピオ・ドナッジオ
カリートの道(1993)
かつての麻薬王カリートが5年の服役から出所する・・・
「スカーフェイス」と同じく主演はアル・パチーノ。ショーン・ペン、ジョン・レグイザモやヴィゴ・モーテンセンも出演している。
ミッション:インポッシブル(1996)
記念すべき「ミッション:インポッシブル」シリーズの1作目。
2作目以降のアクション主体のトム・クルーズのプロモーションビデオ的(これはこれでトムクルファンなので好きなのだが・・)ではない、デ・パルマ独特のサスペンス風味が効いた映画となっており良い。
スネーク・アイズ(1998)
ボクシングのヘヴィー級タイトルマッチの最中、観客出会った国防長官が暗殺される。
現場にいた刑事リックは巨大な陰謀に巻き込まれる。
当時、冒頭の長回しのタイトルマッチでのカットが話題となった。
ニコラス・ケイジ主演。
ミッション・トゥ・マーズ(2000)
デ・パルマ作品では珍しいSF作品。
ゲイリー・シニーズ、ドン・チードル、コニー・ニールセン、ティム・ロビンスなどが出演。
ファム・ファタール(2002)
音楽は坂本龍一。
ブラック・ダリア(2006)
1947年のブラック・ダリア惨殺事件をベースとしたジェームズ・エルロイのLA4部作の1つ「ブラック・ダリア」が原作。
ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート、スカーレット・ヨハンソン、ヒラリー・スワンクなどが出演
デ・パルマ
ドキュメンタリー作品
最後に
デ・パルマといえば、ヒッチコック作品が大好きでオマージュな場面を沢山入れているイメージだが、さらにスプリットスクリーンや、ドリーで後ろに引きつつのズームショットといった映像で独自の世界観を作り出している気がする。
また、こうして調べてみると出演者、音楽なども豪華なメンバーが使われているので、再見する機会があれば確認してみるといいと思う。
個人的にはベスト3は以下
①ミッドナイトクロス
②愛のメモリー
③キャリー
④殺しのドレス
⑤スカーフェイス
⑥ファントム・オブ・パラダイス
⑦フューリー
⑧ミッション:インポッシブル
⑨アンタッチャブル
⑩悪魔のシスター
コメント