『ポゼッション(1981)』デジタル・ニューマスタ版で鑑賞
見どころ
・後半から想像をはるかに超えた方に進んでいくストーリィ。
・イザベル・アジャーニの陶器の人形のような美しさ
あらすじ
久々に長い単身赴任から夫マルク(サム・ニール)が美しい妻アンナ(イザベル・アジャーニ)と幼い息子が待っているはずのアパートに帰ってきた。。
しかし、そこで待っていたのは、よそよそしい妻アンナの姿だった。
夜な夜な姿を消す妻にマルクは男がいるのではないかと疑念を持つマルク。その問いかけにアンナはあっさりと肯定する。
アンナの友人マルジから男の居所を聞き出し問い詰めるも、彼女が会っていたのはさらに別の人物であった・・・
映画について
カンヌ映画祭でパルムドールにノミネートされた。
初見時、家庭崩壊を描いたラース・フォン・トリアーが撮るような鬱なスリラードラマかと思いきや、予想外の展開へと転がっていく西ドイツとフランス合作映画。
とにかくこの映画、主演の二人の演技が凄まじい。イザベル・アジャーニが演じるアンナの視点が定まらないない狂気の表情や所作はもはや演技を通り越している。
錯乱状態のアンナが料理用の電動ハンディノコで肉を切るために使うシーン見ていてはらはらした。
また、地下道で買い物の牛乳を飛び散らせ、暗黒舞踏のように踊るように動きながら吐き、血を流しながら苦悶するところは凄まじかった。(『エイリアン』でアッシュが牛乳みたいな血液を吹きながら踊るシーンを思い出した。)
また、サム・ニール演じるマルクが妻の不在でベッドの上で苦悶するシーンも凄い。
小さい子供がいる家庭で両親がそんな状態になっており見ていて心配になってしまった。
前半はメンタル的にきついシーンが多いが、反面、アラが多く笑ってしまうシーンが多く息が抜ける。妻の素行調査のために雇った探偵の追跡のひどさや、自動車クラッシュシーンなどである。
後半は謎の人物に近づくにつれ、哲学的というか不可解な内容になってくる。
不貞している話に見せながら究極の愛も描いているのでないかと思えてきた。
B級イタリアンアクションやホラーな展開にもなるので後半楽しめた。
なお、監督が意識していたか分からないがH.P.ラブクラフトファンの私はクゥトゥルフ神話的(太古の邪神たちが現代に現れ人間を狂気に陥れる創作神話)の一遍のような印象を受けた。
夫マルク役は『オーメン 最後の闘争(1981)』、『マウス・オブ・マッドネス(1995)』、『イベント・ホライゾン(1997)』などに出演のサム・ニール。
妻アンナ役は『アデルの恋の物語(1975)』『ザ・ドライバー(1979)』のイザベル・アジャーニ。彼女は本作の演技で1981年のカンヌ映画祭の主演女優賞を獲得している。
本作では一人で二役を演じているが、陶器の人形のようで美しい。
監督はポーランド出身のアンジェイ・ズラウスキー。1972年の『悪魔』が主人公が悪魔から手に入れたカミソリで殺人を繰り返す内容でポーランドで上映禁止処分となる。
また、『私生活のない女(1984)』のヴァレリー・カプレスキー、『狂気の愛(1985)』ではソフィー・マルソーといった女優達を鍛え上げて迫真の演技に導く監督である。
特殊効果は『エイリアン(1979)』『E.T.(1982)』でアカデミー視覚効果賞をとったカルロ・ランバルディだけあって、『ヘルレイザー(1987)』を彷彿させるグログロの造形を作り上げている。
↑公開当時のチラシ
最後に
本作は2020年1月に40周年記念リマスターされて劇場でリバイバル公開されている。
初見の方はかなり衝撃的な内容だったと思う。
アジャーニの演技が凄まじく、見ている方もメンタルを削られてしまうのでそういう映画が苦手な方やメンタルの調子が悪い時にはおすすめできない。
また、官能的なシーンも多いので家族で見るときはご注意を。
後半は思いのほかB級イタリアンアクションやホラーな展開となり、とても面白かった。
本作みたいな映画が好きな方へのおすすめはロマン・ポランスキー監督『反撥』、ケン・ラッセル監督『肉体の悪魔(1971)』や『尼僧ヨアンナ(1961)』である。
あとは『エクソシスト(1973)』かなあ。
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